研究概要 |
1.実証プラントの設置 本研究の知見を基に,実証プラントを作成し,徳島県・沖の洲港に設置した. 2.プラントによって期待される効果やその評価項目 (1)プラント内の溶存酸素が四季を通して,生物の生息に影響を与えない4mg/L程度を下回らないこと.(2)プラント前面に設置したポーラスコンクリートに懸濁物食者の二枚貝が生息し,懸濁物を除去すること.(3)プラントの底部には堆積物食生物が生息すること,注目種としてはナマコを考える.(4)プラントを中心とした物質循環を本技術の評価項目とする.比較対象とする場は既存の直立護岸である. 3.プラントラントの効果検証 (1)プラント前面のポーラスコンクリートに生息する懸濁物食生物であるムラサキイガイによって,懸濁物と溶存態有機物はそれぞれ40%,30%除去されていることがわかった.(2)その一方で,夏期にはプラント内で溶存酸素が2mg/Lよりも低下し,酸素不足となっていた.その原因を室内実験で検討したところ,ムラサキイガイの呼吸によるものであることが明らかとなった.そこで,ポーラスコンクリートの量を減らし,ムラサキイガイの個体数を調整したところ,プラント内の溶存酸素は4mg/L以上を保つことができた.同時に懸濁物,溶存有機物の除去効果は減少した. 4.プラント内に生息する生物や生息を期待する生物の生態に関する実験 (1)懸濁物食生物ムラサキイガイの単位時間当たりの呼吸量,懸濁物摂取速度を明らかにすることができた.(2)ムラサキイガイが海底に脱落した場合の上位生物による捕食作用について検討した.捕食生物としてはマヒトデ,イトマキヒトデが効果的な種であることを示すことができた.(3)堆積物動物のマナマコは明確な空隙への選好性を示した.特に昼間には空隙内で居る時間が長く,主に夜間に生息した.このことから,プラント内にマナマコの生息を促すためには,直径5cm程度の空隙を用意すると効果的であることがわかった.(4)堆積物の摂餌特性について検討したところ,珪藻を多く含む極表層の堆積物を摂餌していることが示すことができた.(5)海底に光が照射される環境では付着珪藻や海藻(シオミドロ)が出現する.プラント内を静穏的な環境にした場合には,それらが繁茂し,死亡後には汚濁物となり,富栄養化現象を促進することがわかった.しかしマナマコが生息すると,それらの生物の繁茂は抑制されることがわかった.
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