研究概要 |
食中毒シガテラの対応策として、原因毒である海産ポリエーテル化合物の高感度な検定法の開発が期待されている.本年度は、主要原因毒であるシガトキシン1Bを認識する抗体の調製を検討した。シガトキシン1B(2S.5R)のABC環部にリンカーを導入したハプテンを設計した。B環部としてD-グルコースを利用し、A環、C環、側鎖の順に、合成を進めた。繊細で高度に官能化されたA環部及び側鎖の構築が問題となった。多段階(>40工程)を要したが、2位のエピマー混合物であるハプテンを合成できた。これをキャリアータンパクBSA及びKLHとそれぞれ結合し、コンジュゲートを作成した.ハプテンとOHとのコンジュゲートを人工抗原として、マウスを免疫し、3種のモノクローナル抗体(4H2,6Fl2,6H7)の調製に成功した。まず、ELISA法による競争阻害実験から、2位エピマー混合物であるハプテンに対して、交差活性を比較した。6H7と6F12の場合、十分な交差活性を確認できたが、4H2は弱かった。別途合成したリンカーのないABC環部のエピマー、(2S)及び(2R)を用い、それぞれ同様に交差活性を調べた。6H7は2R配置のABC環部を、4H2と6F12は2S配置を認識し、2位の立体化学を識別していることが分かった。更に、シガトキシンlBの絶対配置(2S)を考慮して、6F12によるシガトキシン1Bの認識を検討した。同様の阻害実験から、弱いながらも交差活性を確認できた。現在、3種の抗体の機能改変と再免疫を検討すべく、より短段階でのハプテンの合成を迅速に進めている。
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