研究概要 |
シガトキシン左端ABC環部ハプテンを設計、合成した。2位に関する1:1エピマー混合物である。これをタンパクコンジュゲートとした人工抗原を作製して、3種のモノクローナル抗体(4H2,6F12,6H7)を得た。抗体それぞれについて、別途合成したハプテンとの交差活性をELISA法で検定した結果、非常に興味深いことが分かった。即ち、得られた抗体それぞれは、2位立体配置を完全に識別する能力を持っていた。つまり、4H2と6F12は2S配置を完全に認識し、6H7は2R配置を認識した。従って、天然型配置を認識するモノクローナル抗体4H2と6F12が抗シガトキシン抗体として有望である。そこで、それらのシガトキシンとの交差活性をELISA法で検定したが、シガトキシン検出に実用可能なほど十分な結合能を示さなかった(Kd>mM)。高感度で検定できる抗体(Kd〜nM)の調製には、更に検討が必要なことが分かったので、新たにハプテンコンジュゲートを合成した。従来法では大変な労力と時間を要した。しかし、閉環オレフィンメタセシス(Ru)や遷移金属触媒(Pd,Ni)を駆使した新合成法によって、ハプテン合成も大変迅速にできるようになり、5種のハプテンコンジュゲートをマウスに免疫することができた。更に、遺伝子改変による抗体の改良を開始することができた。モノクローナル抗体(4H2)のアミノ酸配列を決定し、ホモロジーモデリングで三次元構造を構築したところ、ループ領域であるCDRH3部分が、ハプテンとの相互作用に深く関与していると推察された。現在、ファージディスプレイ法を利用して、抗体のハプテン認識部位のアミノ酸残基を変化させた抗体ライブラリーを作製中である。また、ファージ抗体のハプテンへの結合特性を手早く評価するため、最近、表面プラズモン共鳴センサーを用いたアッセイ系を確立した。
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