高圧円偏光二色性の測定法の開発とタンパク質二次構造に与える高圧効果

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10558097
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 林 力丸 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90027186)
• 研究分担者: 河井 昭治 テラメックス株式会社, 開発部, 主任研究員 ; 佐藤 周一 住友電気工業株式会社, 研究開発本部, 主任
• キーワード: 圧力変性 / タンパク質の耐圧性 / 高圧円偏光二色性 / タンパク質二次構造 / タンパク質立体構造 / αへリックス / β構造

研究概要

円偏光二色性(CD)測定を高圧下で行う(「その場」観察)ための耐高圧力セルを前年度作製したので、これを用いて合成ポリアミノ酸、タンパク質、酵素の圧力変性を解析する。特にαへリックスやβ構造と共にタンパク質立体構造の耐圧力性を比較し、タンパク質構造形成の原理を解明することを目的にし、以下の結果を得た。
1.高圧下(500MPa)でポリグルタミン酸とポリリジンのαへリックスとβ構造の崩壊過程を観察するため、pH条件を酸性からアルカリ性に変化させて、pHと圧力の関係を測定した結果、ダイヤモンド窓は220nmに吸収があることがわかり、α、β両構造を明確に分離できなかった。
2.リボヌクレアーゼAとカルボキシペプチダーゼYおよびそれらの1残基置換変異型酵素の圧力効果を解析し、タンパク質構造の圧力安定性を測定し、リボヌクレアーゼAのPhe120とカルボキシペプチダーゼYのシステイン残基の構造への寄与を明らかにした。
3.ダイヤモンド窓をもつ耐圧セルにより、タンパク質の近紫外CDを測定し、圧力の三次構造に与える影響を解析した。特にリボヌクレアーゼAの280nm付近のCDを測定し、この圧力変性が二次状態であることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Jung,G.M.: "Carboxypeptidase Y : Structural basis for protein sorting and catalytic triad"J.Biochem.. 126. 1-6 (1999)
• [文献書誌] Kato,M.: "Effect of high pressure on lipids and biomembranes for understanding high-pressure-induced biological phenomena"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 63. 1321-1328 (1999)
• [文献書誌] Simizu,H.: "Role of carbohydrate moiety in carboxypeptidase Y : Structural study of mutant enzyme lacking carbohydrate moiety"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 63. 1045-1050 (1999)
• [文献書誌] Dumoulin,M.: "Contribution of the carbohydrate moiety to conformational stability of the carboxypeptidase Y : High pressure"Eur.J.Biochem.. 262. 475-483 (1999)
• [文献書誌] Fujii,T.: "Effect of mutagenic replacement of carboxy terminal amino acid, Val124, on properties and regeneration of bovine pancreatic ribonuclese A"J.Biochem.. (in press). (2000)
• [文献書誌] Jung,G.M.: "高圧バイオテクノロジー"さんえい出版. 245 (1999)
• [文献書誌] Dumoulin,M.: "Advances in High Pressure Bioscience & Biotechnology"Springer. 584 (1999)