本研究では、部分水解による還元末端よりの構造解析の確立と2次元糖鎖マップを組み合わせた分析法の確立とこれを行うためのシステムの作成を行った。規格化の困難な酵素消化の代わりに部分酸加水分解を用い、得られたPA-オリゴ糖をHPLC2次元糖鎖マップ法で同定し、これらの断片より元の糖鎖構造を明らかにした。検出出来るのは標識の結合した還元末端由来の糖鎖のみであるため、還元末端より糖鎖構造を解析出来る。6pmolの糖鎖の0.5%の水解物も同定出来るため高感度である。これらを組み込んだ、PA-糖鎖断解析システムを開発する。蛍光標識法や、2次元糖鎖マップ、溶出位置と構造間の規則性、糖鎖のパターン解析等を基盤とし、糖鎖の自動構造解析装置の基礎を確率する。 糖鎖の結合様式には中性糖やアミノ糖の配糖体結合、フコースやシアル酸等の酸に対して弱い配糖体結合、ウロン酸の様に酸に強い配糖体結合等の種々のものがある。理想的には一つの条件で全ての結合が部分的に水解されると、全ての構造が得られるため理想的であるが、しかし、実際には不可能である。そこで部分的に酸水解する条件の検討を行った。その結果、次の3種類の条件を用意した。1)中性糖やアミノ糖の配糖体結合の部分水解用の条件。2)フコースやキシロース残基の部分水解用の条件。3)シアル酸残基の部分水解用の条件。本条件を用いることにより、分子サイズの大きな糖鎖からでも、考えられるほとんどのオリゴ糖を得ることが出来た。各オリゴ糖の2次元糖鎖マップによる構造解析を行った。2次元糖鎖マップ上に糖鎖のデーターが十分にあれば、その位置の照合のみで構造が解析できる。代表的な糖鎖の部分水解物の2次元糖鎖マップを揃えておけば、パターン解析を行うことにより、問題の糖鎖の基本骨格を解析することが出来る。上記の方法で決定した、各オリゴ糖の構造より、元の糖鎖構造を再構築する。オーバーラップするオリゴ糖が何回も出てくるため、構造の精度は高い。この様に、本方法では還元末端よりの構造解析が可能であり、非還元末端に未知の残基や構造が存在しても、基本となる構造の決定は可能である。また、本方法が実行できるシステムの作成を計画した。本方法を実際の糖鎖に応用し、その有用性を確認した。
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