研究概要 |
ミクログリア異常活性化は,脳虚血後遺症やアルツハイマー病等の種々の神経変性疾患における神経細胞障害の原因となっているとの認識が広まりつつある。その障害機構として,血液脳関門の破綻により漏出した血清因子がミクログリアの活性化を引き起こし,細胞を盛んに増殖させたり,活性酸素(O_2)などの細胞毒性の強い物資の産生を促す可能性が示唆されている。最近我々は培養ミクログリアのフォルボールエステル刺激によるO_2産生が血清アルブミンにより顕著に増強されることを報告したが(Si e al.,1997,Glia 21:413-418),本研究ではアルブミン分子内の活性部位の同定に成功した。最初に牛血清アルブミン(BSA)のトリプシン分解産物の中から活性のある成分を精製したが,それはアミノ酸12個と33個からなる二つのペプチドがジスルフィド結合した分子量約5kDaのサブフラグメントであった。さらに,化学合成した短い12-merのペプチドは約0.1μMの濃度域でBSAと同等なミクログリアO_2産生増強を示した。またその12-merに由来する各種のペプチドを合成し,最小の活性配列がアミノ酸4つのLeu-His-Thr-Leuであることをつきとめた。このペプチドによるO_2産生増強作用はラット腹腔マクロファージにおいても観察された。本研究の研究成果はミクログリア異常活性化を抑制する新しい方策の開発に寄与するだけでなく,生体防御系におけるアルブミンの新しい役割を指摘するものである。
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