研究課題
脳の構造・機能を知るためには、複雑であるが秩序だった神経回路網に関する詳細な知識が不可欠である。すなわち機能的に関連したニューロンどうしがどのような配線様式でつながっているか、を体系的に明らかにする必要がある。そのために私たちは小麦胚芽レクチン(WGA)遺伝子をトランスジーンとして特定のニューロンに発現させ、そこを起点とする神経回路を可視化する技術を考案した。これまでにWGAトランスジーンのシステム確立のために既に次のような2種類のトランスジェニックマウスを作製し、どちらのマウスにおいても1次ニューロンにおけるwGAの産生と軸索末端までの輸送、2次ニューロンへの経シナプス性の取り込みとその投射領域のラベリング、さらには3次ニューロンへの取り込みを確認している。a. L7-WGAマウス(小脳遠心性経路)小脳プルキンエ細胞特異的L7プロモーターの支配下にWGAを発現するトランスジェニックマウスを作製した。このL7-WGAマウスにおいては、小脳プルキンエ細胞にWGAが特異的に発現し、2次ニューロンである小脳核ニューロン、さらには3次ニューロンである赤核および視床腹外側核ニューロンまでWGAが輸送されており、運動制御を司る小脳遠心性経路を可視化することができた。b. OMP-WGAマウス(嗅覚経路)嗅細胞特異的OMPプロモーターの支配下にWGAを発現するマウスを作製した。このOMP-WGAマウスにおいては嗅上皮の嗅細胞にWGAの発現が観察され、その標的細胞である嗅球の僧帽細胞/房飾細胞(2次ニューロン)へとシナプスを介して輸送され、さらにその投射部位である嗅皮質が選択的にラベルされた。
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