研究概要 |
本研究では、マウスおよびラット始原生殖細胞および精原細胞から培養細胞株を樹立して、さらにこれを配偶子まで分化させる系を確立することを目的とする。本年度はすでにマウス始原生殖細胞から樹立されている多能性細胞株であるEG細胞を、生殖隆起体細胞及び、減数分裂を誘起する事が知られているフォルスコリン及び減数分裂誘導ステロイド(MAS,meiosis activating sterol)存在下に培養後、腎臓皮膜下に移植して、EG細胞由来の卵形成の有無を検討した。その結果、卵形成は確認されなかったが細胞株によって、そのまま移植した場合には観察されるテラトーマ形成が起こりにくい場合があることが確認された。この結果は、培養に加えた因子が減数分裂の誘導には十分ではないものの、EG細胞の体細胞へのランダムな分化を抑制する効果があることを示唆している。また、新たな精原細胞株を樹立する目的で、当研究室ですでに得ているBcl-2を精原細胞で過剰発現するトランスジェニックマウス及びp53ノックアウトマウスの精巣を解離後、STO細胞フィーダーまたはタイプ1コラーゲンでコーティングした培養皿で2週間培養した。培養後、生殖細胞特異的なTRA98モノクローナル抗体で染色し、生殖細胞数の経時変化を調べたところ、p53ノックアウトマウスのものは正常マウスと変わらず2週間後にはほとんどすべての生殖細胞が消失したが、Bcl-2トランスジェニックマウスを培養したものでは正常マウスより10倍程度多い生殖細胞が観察された。この結果からBcl-2トランスジェニックマウスの精巣から、精原細胞株か樹立できる可能性が考えられる。
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