研究概要 |
1) 生体吸収性繊維であるポリ乳酸、ポリディオキサノン,ポリグラクチン910繊維(いずれも直径0.3mm)について、特性の糸用把持具を取り付けた万能試験機を用い破断試験を行った。grip間距離は9.5cmとした.1%の歪みで5回のpreconditioningを行った後,20mm/minのcrosshead速度で破断させた。繊維の延びはCCDカメラとVideo dimension analyzerからなる非接触型変位測定装置で観察した。その結果、最大破断強度はポリ乳酸が37.2±2.1N、ポリディオキサノンが36.5±1.2N,ポリグラクチンが38.5±2.5Nであり、有意差はなかった。 2) 同繊維材料の加水分解による劣化の差を調べるため,37℃の恒温生理食塩水中に上述の各繊維を12本ずつ浸漬し、3および6週の時期に6本ずつ同様の力学試験を行った.その結果、ポリ乳酸の最大荷重は3および6週では処女材と比べてほとんど変化がなかった。ポリディオキサノンの最大荷重は3および6週で処女材の88.8%および81.9%とわずかに低下した。ポリグラクチンの最大荷重は3週では処女材の72.3%であったが、6週では8.5%と激減した。以上より前2者の繊維材料が生体同化性ハイブリッド型人工靭帯のために有望と判定された. 3) 同繊維材料の生体内劣化に関する研究を行うための基礎研究として、生体内埋植部位を決定するための予備実験を行った。直径のみが異なる2種類のポリディオキサノン繊維を埋植材料とした.日本白色家兎24羽を用い、12羽ずつ2群に分け,S群には平均直径0.3mm,L群には平均直径0.6mmの繊維を、各動物の大腿内側の皮下および脛骨近位端骨肉に埋植した.術後3および6週で各群6羽ずつ屠殺し,直ちにPD繊維を摘出し同様の引っ張り試験に供した.その結果、生体内に埋植した繊維の最大荷重は,いずれの時期においても生理食塩水中に侵漬した繊維のそれより有意に低かった.さらに,骨内に埋植されたPD繊維の最大荷重は,その径にかかわらず,いずれの時期においても皮下に埋植した繊維より有意に低かった。本研究は,新しく開発された生体内吸収性人工繊維の評価を行う場合,皮下埋植実験のみでなく,少なくとも骨肉を含んだ複数の環境で行われるべきであることを示した.
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