研究概要 |
1)実験にはビーグル成犬14頭を用いた.移植材料として,同種膠原線維束と初期強度を近似させた4種類の高分子繊維束(E束;φ0.4mmのPolyester糸7本,L束;φ0.3mmのポリ-L一乳酸糸20本,D束;φ0.6mmのPolydioxanone糸6本,G束;φ0.3mmのPolyglactine糸18本)からなるハイプリッド型人工靭帯を作成した.各動物においては、4種類のhybrid代用材料から無作為に2種類を選択し、両膝に十字靭帯再建を行った.評価の対象とした脛骨側では、直径4.5mmの骨孔の中に膠原線維束部分が15mm入るようにした。6週後に屠殺し,10頭をX線(CT)学的評価と生体力学的評価に、4頭を組織学的評価に供した。 2)X線学的評価:CT画像上で移植腱部中央の骨孔面積には4群間に有意差を認めなかったのに対して、人工繊維部の骨孔面積では,E靭帯はD靭帯およびG靭帯より有意に小さかった(Pく0.05)。 3)引き抜き試験:破断様式はG靭帯の5膝中4膝で人工繊維部が破断し、移植腱全体が骨孔から引き抜かれたが、他の群ではその部位の破断は発生せずにすべて腱実質部での断裂が生じた。最大破断荷重はD靭帯でやや低値を示したものの、4群間に有意差は検出されなかった。 4)組織学的評価:骨孔内の人工繊維周囲にはいずれの群でもそれを取り囲む線維性肉芽組織の形成を認め、特にG靭帯では膠原線維は靭帯様の外観を呈した。しかし、いずれの群においてもこの組織と骨孔壁との間にはSharpey線維様の膠原線維による結合はほとんど認められなかった.一方、E靭帯およびL靭帯では骨孔壁からの人工繊維間への骨新生が著明であったが、G靭帯ではその傾向はほとんど認めなかった. 5)本研究は人工繊維部に吸収性繊維を使用した時,周囲の肉芽組織形成が強ければそれが骨孔内骨新生を阻害することを示した.吸収性繊維のL靭帯は非吸収性のE靭帯に最も近い骨孔閉塞を示した.これにはPLLA糸固有の電気的特性が関与している可能性がある.
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