研究概要 |
本年度は,確率共鳴の機械を試作するのに必要なプロトタイプのモデルの作成と,データ収集のための微小計測実験技術の開発を行った. このために,我々はモデル解析のために筋肉のアクチンミオシン系に注目し,熱ノイズを利用できる形態・方式及びエネルギー能率の変化等の物理工学的量を見積もるための計算を行った.これにより,アクチンミオシン系の確率共鳴機械のモデル化として,次のような事が知れた:これは,アクチンミオシン系の新しいモデルであり,熱ノイズから供給される対照的なゆらぎが,非対称ゆらぎに変換され,この熱ノイズにより一方向に駆動される.この様な原理(ノイズとの共鳴現象=確率共鳴)で動作する機械は、Stochastic Machineと呼ぶことが出来る.つまり,アクチンミオシンシステムも一種の確立共鳴機械であり,機械構造としては振動体(ゆらぎの対称性を破るために傾いていること)付きロッド,アクチンミオシン間に作用する分子間力,多くのロッドを束ねるためのバンドル,及びミオシン頭部に匹敵する錘である.この様な分子間力は、ドレークスラの提唱している分子間力ギアにと同一の物であり,アクチンミオシン相互作用はラックとピニオンのギアと同定できる.ミオシン頭部に相当する錘の部分は、一種の共鳴器にあたり,熱ノイズからのエネルギーを受け取っている.また,レーザーピンセットと車軸藻のアクチンミオシン系を用いた試作のための予備的操作実験では,ミオシンを正常方向とは,逆方向に滑走させる実験に成功した.
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