研究概要 |
本年度は,昨年度提案した確率共鳴機械としての筋肉組織(アクチン・ミオシン系)モデルの精密化と,一般のナノマシンシステムへの拡張を試みた. 特に,熱ノイズ利用型確率共鳴機械としてのアクチン・ミオシン系のプロトタイプモデルとしては,大筋が完成したといえる.確率共鳴型分子機械としての動作機構は,以下のようである. 1)ATPの加水分解により熱エネルギーが放出される.この放出された熱は媒質分子(水分子)の熱運動を活性化させる.2)活性化した水分子は,バネ(ミオシンロッド)の先端に固定されているミオシン頭部に不規則な振動を誘起する.3)不規則な振動の中から,頭部の質量とバネ定数により固有振動が選び出される.(確率共鳴現象の発生)4)振動しているミオシン頭部は,アクチン繊維を傾いたロッドにより斜めに蹴ることにより前進する. この過程においては,熱源はATPと,散逸系における遠方の低熱源,水の温度および,アクチン繊維をZ膜に固定するためのバイアスが存在している.これらの要素の存在は,熱力学第二法則の成立を保障するものである.さらに,現在,熱ノイズと量子ゆらぎを組み合わせたエネルギー変換システムを設計中であり,この試作実験研究システムは,熱ノイズによって生じた電流を,非対称な電場によって生じたトンネル効果の差を利用して整流作用を行うものである.
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