研究概要 |
(1) セグメント化ポリウレタンフィルムへのエキシマレーザー加工により孔径の異なる微細貫通孔を作成した多孔構造化フィルムを作製した。開孔部の総面積比を一定とし、孔径を変化させた多孔化フィルム間では弾性率はほとんど差が無かった。一方、孔径を一定とし、開孔部の総面積比を増加させると、弾性率は単調に減少した。エキシマレーザー加工により、ハイブリッド人工臓器の骨格基材として任意の孔径と孔間隔を設計して微細多孔化することができ、多孔化の条件によって力学的物性を調節することができることを示した。 (2) ポリエチレングリコールの両末端にエステル結合を1、3または5個有する二官能性マクロマーを合成した。いずれのマクロマーの場合にも、光重合開始剤を含む水溶液に紫外光を照射するとゲル化した。ゲル化収率はエステル基数が多くなるほど低下した。柔軟性はエステル基数が多いものほど増した。ゲルを弱アルカリ性の緩衝溶液中で振とうすると、いずれも時間とともに徐々に加水分解が進行した。 (3) 光照射によって架橋する親水性高分子として,ケイ皮酸またはクマリン基を側鎖に有するジメチルアクリルアミド共重合体,ジチオカルバメートまたはベンゾフェノン基を側鎖に有する共重合体およびポリエチレングリコールの両末端をベンゾフェノン化した光ラジカル発生型親水性オリゴマーを合成した.各光反応性高分子水溶液を流動パラフィン中で攪拌し,微細粒子状に分散させながら紫外光を照射するとハイドロゲルマイクロビーズが生成した.生理活性物質と光反応性高分子の混合水溶液を同様に光照射すると,生成したビーズ内に生理活性物質を包埋することができた.また,細胞を混合して照射するとビーズ内は細胞を封入でき接着床として機能した. (4) エキシマレーザー加工によりポリウレタンフィルムの表面を領域毎に孔密度を段階的に変化させて微細孔形成したマルチパターン化多孔質フィルムを作成した。これを円周方向でパターンが変化するように成型したチューブをカテーテルで犬総頚動脈内に留置した。術後1ヶ月、全例が開存していた。チューブ内腔面は孔密度に関わらずほぼ全面がコンフルエントの内皮細胞で被覆された。多くの場合、無孔部においてチューブ内面での顕著な血栓層の形成を認め、有孔部では低孔密度領域を除いて血栓はほとんど認めなかった。また、有孔部では主として経壁的な組織侵入が、無孔部では吻合部及び隣接する有孔部からと考えられる組織侵入が起こり、両者とも内膜組織形成を認めた。内膜壁の厚さは孔密度が増加するのに伴って薄くなった。
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