培養細胞の核移植によるクローン技術の魚類への適用は、生物学および産業分野で多くの期待が寄せられている。この技術を遺伝子操作技術と組み合わせれば、様々な遺伝的性質を持った遺伝子改変個体の作製が可能になるからである。本年度はメダカ(Oryzias Iatipies)をモデル動物としてクローン魚類作成の基礎技術を確立するため、以下の三段階にわけて研究を行った。 1. 核移植個体における外来遺伝子の発現 移植核由来の外来遺伝子が核移植個体において発現するかどうかを調べるため、緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子を導入したトランスジェニック系統の胚細胞核をドナーとして、ヒメダカ未受精卵に移植した。その結果、移植卵の1.1%がGFP外来遺伝子を発現し、成体まで成長した。GFPの発現様式は、胚および成体においてもドナー系統と同じであった。 2. 除核卵への核移植 二倍体の核移植個体を作成するため、X線照射によって除核したヒメダカ未受精卵にアルビノ系統の胞胚期の胚細胞核を移植した。その結果、移植卵の2.3%が孵化した。それらはアルビノ体色であった。稚魚は成体まで生育しなかったが、移植核由来の二倍体であると考えられる。 3. 培養細胞を用いた核移植 培養細胞核を除核していない卵に移植する実験を行った。培養細胞の移植には胚細胞にはない技術的な困難があり、これらの問題と除核卵への移植は次年度に持ち越した。
|