1.目的:魚類は生物学の基礎研究だけでなく、食糧としても重要な生物資源である。しかし、現代的な遺伝子操作の手法が確立していないために、資源として有効に利用されているとは言えない。そのような技術の一つとして本研究では培養細胞核を移植する方法で魚類の体細胞クローンを確立する。 2.方法:(1)非除核卵への胚細胞核の移植:基礎技術を確立するためにこの段階から始めた、(2)除核:ヒメダカの成熟卵母細胞について25〜350GyのX線を照射して除核の実験を行った、(3)ドナー核の採取:メダカポリペプチド鎖伸長因子遺伝子プロモーターにGFPを結合した(EF-1α-A/GFP)遺伝子をホモの状態で組み込んだ野生型体色の純系(NNI-I系統)、メダカβ-アクチン遺伝子のプロモーターにGFPを結合した遺伝子(β-Act-GFP)をホモの状態で組み込んだヒメダカ系統、(4)移植後の個体について胚期、稚魚期、成魚期を通して、体色、GFP蛍光、GFP遺伝子、アロザイムマーカー、、性成熟、妊性、染色体数などの検索を行った。 3.結果の概要:(1)非除核卵への移植では移植核の形質をもつ個体が得られたが、3倍体で不妊であった、(2)除核は100〜200Gyの線量が至適であることが明らかになった、(3)二つのドナー系統を用いた実験で合計886個の核移植を行った。その中から7個体(0.8%)の核移植個体が成魚にまで成長した、(4)これらの個体は全てが雌で、妊性があった。染色体数は2倍体の48本であった。体色、GFP蛍光、GFP遺伝子、アロザイムマーカーなどのドナー核由来のマーカーはメンデルの法則に従って、F_1およびF_2の世代に遺伝した、(5)培養細胞の核移植についてはさらに検討中である。
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