研究概要 |
高度情報化社会へ向けてめざましい発展をしているマイクロ波通信を支えるセラミックス共振器の特性の発現機構を結晶構造との相関から原子レベルで解明し、その材料の開発・設計を目的として研究をした。 1.Ba_<6-3x>R_<8+2x>Ti_<18>O_<54>(R=Sm,)固溶体は、純粋な組成では焼成温度が1450℃以上と高いので、マイクロ波誘電特性を保持したまま焼成温度を1350℃へ低下させることに成功した。調合組成をTiO_2側へ僅かにシフトさせ共融組成にすることにより達成した。 2.低温焼成を促進させるイオンとして知られるBiをBa_<6-3x>R_<8+2x>Ti_<18>O_<54>(R=Sm,Nd,)固溶体へ固溶させ、陽イオンの固溶状態とマイクロ波誘電特性との相関を解明した。100℃程低い工業的焼成温度1350℃での低温焼成を可能にした。 3.タングステンブロンズ型類似Nd系固溶体にBaWO_4を添加した効果を研究した。両化合物は固溶体を形成せず、共融系を形成したが焼成温度は1460℃と低温下は達成できなかった。BaWO_4の添加により品質係数の向上(Qf値が2500アップ)が見られた。誘電率は減少、周波数の温度依存性τ_fは増加した。 4.タングステンブロンズ型類似構造を持つBa_<6-3x>R_<8+2x>Ti_<18>O_<54>(R=Sm,Nd,La)固溶体の希土類元素による品質係数の違いを内部歪みから検討した。高エネルギー研究所の放射光によるプロファイルの良いデータを用いて、回折線の判値幅から歪みを求め、特性が内部歪みに依存することを明らかにした。特性の良いSm系のものが最も歪みが小さいことを明らかにした。 5.Ba_<6-3x>R_<8+2x>Ti_<18>O_<54>(R=Sm,Nd,)固溶体へEu固溶によるマイクロ波誘電特性を研究した。Sm、Nd系のx=2/3組成の固溶体とEu系x=0.5組成の固溶体が固溶体を形成することを明らかにした。Euの固溶により品質系数Qfは11000GHzに、共振周波数の温度係数τ_fは減少し、改善された。Sm-Eu系で、τ_f=0、Qf=9500GHz、ε_r=75の材料が得られた。
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