研究概要 |
日本鯨類研究所が、1981/81,1981/82,1984/85,1985/86,1988/89,1989/90,1990/91,1991/92,1992/93,1993/94,1995/96,1996197の南氷洋ミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約430検体および1994,1995,1996年に北太平洋のミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約140検体を分析に供し、以下のような結果を得た。 1) ミンククジラの臓器・組織試料に適した環境化学物質の分析システムを構築した。すなわち有機塩素化合物は、ソックスレー抽出、脱脂、フロリシル分画、GC-ECDによる定量の行程を、また重金属類は酸分解後、ICP-MSおよびAASによる定量法を試験し、良好な精度、感度、再現性を得た。 2) 有機塩素化合物の体内分布を検討したところ、その大半は脂肪組織に残留しておりまた体内負荷量も最大であったことから、この部位が生態解明研究の適切な部位であると判断された。一方、重金属類の体内分布は元素の種類によってさまざまであったが、一般に肝臓は大半の元素で濃度・負荷量が高く、この部位を供試することが適当と考えた。 3) 有機塩素化合物の残留濃度は、南氷洋産に比べ北太平洋産のミンククジラで高く、過去の生産使用量の南北差、生態系における北太平洋産ミンククジラの位置が南氷洋産に比べ上位にあることなどが反映されていると考えられた。 4) 有機塩素化合物および毒性元素(カドミウムと水銀)の残留濃度は、加齢とともに上昇する傾向を示したが、採取年次によって蓄積パターンに変動がみられ、その要因の解明が次年度の研究課題となった。 5) 以上の研究成果の一部を、1998年10月に米国コロラド州キーストンで開催された国際会議で発表した。
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