研究概要 |
日本鯨類研究所が、1988/89,1989/90,1990/91,1991/92,1992/93,1993/94,1995/96,1996/97 1998/99の南氷洋ミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約500検体および1994年〜1998年に北太平洋のミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約160検体を分析に供し、以下のような結果を得た。 1)Fe,Hg,Cdなどの重金属類およびPCBs,DDTs,CHLs,HCHs,HCBなどの有機塩素化合物を化学指標にして北太平洋産ミンククジラの個体群判別を試みたところ、オホーツク産ミンククジラは、DDTsおよびPCBs濃度が高くHg濃度の低い個体群とHCHsが低くCd濃度が高い個体群に2分され、前者は日本海/黄海/東シナ海個体群、後者は西太平洋個体群に由来すると推察された。 2)有害物質を代謝する肝臓の薬物代謝酵素を測定したところ、南氷洋産ミンククジラでは低濃度の有機塩素化合物残留でチトクロームP-450のCYP1Aが誘導されており、本種はこの種の物質の毒性影響に対して敏感なことが推察された。また、ミンククジラのチトクロームP-450 1A遺伝子のアミノ酸配列を調べたところ、イシイルカのそれと高い相同性を示した。 3)南氷洋産ミンククジラの皮と肝臓について12種類の微量元素を分析し多変量解析により個体群判別を試みたところ、III区、IV区、V区海域で捕獲したオスでは元素濃度のマトリックスに有意な差がみられ、これらの個体群は回遊や繁殖、摂餌行動を異にしていることが示唆された。また、本研究により、ミンククジラの生態解明手法として皮を用いた非捕殺的モニタリングが有効であることを実証できた。
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