研究概要 |
(1)pKaを調節したフェニルボロン酸モノマーを組み込んだポリマーの調製とそのグルコース応答特性の解析:生理的なpHにおいて最大の膨潤度変化を達成するためには、ボロン酸基のpKa値を7.4付近に制御する必要がある。昨年度の検討において、4-(1',6'-dioxo-2',5'-diaza-7'-octeny1)phenylboronic acid(DDOP)がこの目的に適うモノマーであることを突き止めたので、今年度はこのモノマーをpoly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAM)に組み込んだ組成の異なる共重合体を調製し、そのグルコース応答特性を濁度変化から評価した。この新たに調製した共重合体は、pH=7.4においてグルコース濃度変化に伴って大きくイオン化率を変化させ、その結果、著しい下部臨界共溶温度(LCST)の上昇をもたらすことが明らかとなった。この事実は、本モノマーを組み込んだゲルが生理的条件において、鋭敏なグルコース応答性の膨潤度変化を示すことを期待させるものである。 (2)ビーズ状ゲルの調製とそのグルコース応答特性の解析:昨年度までは、スラブ状のゲルを用いて実験を行っていたが、速やかでかつ的確な応答を実現するためには、等方的な形状が好ましい。そこで、逆相懸濁重合を用いて、フェニルボロン酸含有ゲルビーズの調製を試みた。過硫酸アンモニウムを開始剤に用い、重合促進剤共存下、低温重合により、直径0.5〜2mmの種々フェニルボロン酸含率の異なるゲルビーズの作製条件を確立した。顕微鏡に画像解析システムを組み込んだ装置を用いた定量的解析より、調製ゲルビーズは速やかなグルコース応答性膨潤・収縮挙動を示すことが判明し、ビーズカラム充填型のインシュリン放出デバイス作成への見通しを得ることが出来た。
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