研究概要 |
(1)グルコース応答性を示す新規高分子の謂製とそのゲル化:昨年度の検討において、4-vinylcarbamylphenylboronic acidとN-isopropylacrylamide(NIPAAm)との共重合体が従来(pH9)に比べてより低いpH(〜8)で明確なグルコースに応答した相転移を示すことを突き止めたので、本年度はさらに共重合成分をNIPAAmからN-isopropylmethacrylamide(NIPMAm)に変更することによって応答温度についても37℃まで引き上げることに成功した。この試みと並行して、下部臨界共溶温度を39℃に有するpoIy(N-vinylisobutylamide)(PNVIBA)ゲルへの4-carbamoylphenylboronic acidの導入を行った。得られたゲルについては、グルコース応答特性を解析し、37℃,pH7.4で応答する見通しを得た。 (2)ビーズ状ゲルの詳細なグルコース応答特性の解析:昨年度において、ビーズ状ゲルの作成条件を確立したので、本年度はこの方法論を用い、各種フェニルボロン酸含有グルコース応答性ゲルビーズあるいはキャピラリーを作成し、その応答の速度論を画像解析装置を用いて詳細に解明した。これより、膨潤層と収縮層界面におけるフェニルボロン酸残基へのグルコース結合が引き金となって高分子鎖のglobule→coil転移が誘導され、水和を伴う緩和(case II型)と連動してゲル内部に膨潤が進行していくことを確認した。また、グルコース濃度の低下によってゲル表層にスキン層が形成されることをレーザー共焦点顕微鏡を用いて視覚的に明らかとした。 以上より、フェニルボロン酸をグルコース応答部位とし、生理条件下でインシュリンの放出制御を行うゲルデバイスの基本的な設計条件を明らかとすることができた。
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