研究概要 |
まず、すでに公表されているロック哲学の読み直し(Tomida,“Idea and Thing",Analecta Husserliana,46,1995:3-143)に関して、海外の研究者(特にJ.W.Yolton)との議論を通じ、その方向性の再確認を行った。その成果は、Tomida,Idea and Thing,Revised and Enlarged Editionとして、現在、イギリスの出版社がその刊行を検討中である。 次に、ロックに見られる自然学的論理空間が、デカルトの観念説にも認められるがどうかを検討した。その結果、デカルトに関しては、自然学から形而上学へという方向性と、従来自明のこととされてきた、形而上学から自然学へという方向性との、動的・重層的連関が明らかとなった。その成果の一部は、Tomida,“Yolton on CartesianImages",in T.Ogawa,et al.(eds.),Inter kulturelle Philosophie und Phanomenologie in Japan(Munich,1998):105-111として公表され、また、関連する話題を扱った“Yolton on Cartesian‘Direct Realism'''も、近く刊行の予定である。 以上の作業に基づいて、現在、バークリにおいて「観念」がどのようにその位置づけや性格を変更していったかを検討中である。この作業は、平成10年度中に完了し、平成11年度には、それに続けて、カントが近代観念説の自然主義的枠組みをどのように変えていったかを考察する予定であった。しかし、バークリの観念説の論理構造は、予想外に複雑であり、また、国際的にも、同様の視点からバークリを研究する者がほとんどいないことなどからして、その解明には、(少なくとも)平成11年度一杯を要することになりそうである。
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