蘇軾・蘇轍と道教との関係を考察中である。蘇軾と道教に関しては既に『蘇軾詩集』 『蘇軾文集』等の記載をもとに雑誌『しにか』に「蘇東披と道教」なる一文を発表した。そこでは副題を「三元・玉皇・虚明・内丹・天心」として、以下の点について論じた。1.道教の重要な祭日である三元日と「赤壁の賦」との関係、2.道教の最高神である玉皇信仰と蘇軾との関わり、3.蘇軾の道教についての考え方と「虚明」の思想、及び「虚明」と「空明」について、4.肉体の中に金丹をつくる内丹と養生思想について、5.道教の一派である天心派の道士蹇拱辰との交渉。但し、紙数の関係もあって、エッセンスのみしか論じていない部分も多いので、講座道教第一巻(雄山閣刊行)に掲載予定の「玉皇大帝と宋代道教・・蘇軾を中心として」の中では、蘇軾の道教思想全体についてより詳細に論じる計画を立てている。その折りには、蘇軾に特徴的な「仇池」の思想、また『周易参同契』 『黄庭経』、荘子思想との関係等を総合的に論じることになろう。更に蘇軾の詩文には、玉皇・造物者の外に、超越者として「天公」が頻出する。この「天公」と道教との関係も検討課題の一つである。 蘇轍に関しては、既に「蘇符と蘇籀」(『東方宗教』所収)の中で『欒城遺言』について言及しているが、現在、『蘇轍集』 (『欒城集』等)を読書中で、『老子解』 『古史』等と合わせて彼の道教思想を究明して、雑誌『新しい漢文教育』に「蘇轍と道教」と題する論文の発表を予定している。蘇轍は若い頃から持病があり、養生思想や道教への関心が深かった。蘇轍と蘇軾の道教思想は共通する点も少なくないが、この論文では神・気の尊重等、蘇轍固有の部分の探求を目指すことになろう。
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