研究概要 |
今年度は、3年間の研究計画の初年度として、紀元後7,8世紀に南インド・タミルナードゥ地方でバクティ的ヒンドゥー教が成立するにいたるまでの経緯を、タミル古代文献に見えるさまざまな文化的要素がどのように変容しつつバクティ期に至るかという問題に焦点を絞って考究した。考察に用いた資料としては、『ティルムルガートゥルッパダイ』や『パリパーダル』など、バクティの先行文献(後期サンガム文献、4-6世紀)とされるものを使用し、翻訳を施すなど、文献学的に検証した。その成果は、98年6月の印度学宗教学会(於天理大学)におけるシンポジウム「宗教とメタファー」で発表され、さらに″God as Warrior-king:Images of God in Late Classical Tamil Literature″の形で、インド・ニューデリーのManohar社から出版される英文の研究論文集(辛島昇編)の中に纏められる予定である(論文自体は既に脱稿済み)。 こうした作業と並行して、書誌学的なデータベース作成の基本作業の一貫として、研究計画の遂行に不可欠な基礎資料の欠を確認し、順次可能なものから、国内の大学図書館、外国の図書館・研究所、書籍業者などを通じて、複写ないし購入して研究体制を整備した。さらに、必要に応じて他大学・研究所に出向き、内外の研究者と意見と情報の交換を行った。
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