本年度は、『ジュニャーネーシュワリー』13-18章(全体のほぼ半分以上に相当する4828オーヴィーを含んでいるおり、バクティについて最も詳細に説かれている箇所だという点でも、最も重要な箇所である)のうち、13-14章の解読を行った。その際に、以下の三点の重要性に気づくにいった。 まず一つは、ギーターのマラーティー語による注釈である『ジュニャーネーシュワリー』が背景としている聖典群の問題である。そこでギーター注釈書における聖典引用の問題について調査研究を行った。その成果が、"A Statistical Analysis of the Citations from Sruti and Smrti Literature in the Three Commentaries on the Bhagavadgita"である。 次に第二は、中世のマハーラーシュトラにおけるプラフマニズムとポピュラー・ヒンドゥイズムの相互の関わりに関する理解の必要性である。そのため、Gunther-Dietz DontheimerのPastral Deities in Western Indiaの書評を行うことで、この点に関する理解を深めた。 第三は、『ジュニャーネーシュワリー』にたいするタントリズムを影響と、それを理解するためのタントリズム理解の必要性である。そのため、ヒンドゥー・タントリズム、なかでも特にシャークタ派の思想の理解に努めた。その成果が、「シャークタ派の密教ーーシュリー・チャクラの構造を中心としてーー」と「クラ派の南の伝承におけるシュリー・チャクラの構造」である。 さらに、例年通り、バクティ研究会を主催し、バクティ運動の展開のうち『ジュニャーネーシュワリー』以降の北インドにおけるサンスクリット語文献と中古ヒンディー語文献に見られる展開(ヴァッラバとヴァッラバ派とカビール)について議論を行った。
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