本年度は、最終年度のまとめの年に入り、まず、原典和訳に関しては、『マハーラーシュトラ』第7号に『ジュニャーネーシュヴァリー』(第三章)を発表した。さらに、これまでの訳業を集大成するような形で、『ジュニャーネーシュヴァリー』(1-3章)を金沢大学アジア宗教文化叢書第1巻第1号として出版した。 次に、研究発表としては、京都大学のインド思想史学会にて、「ギーター註解としての『ジュニャーネーシュヴァリー』-1-6章を中心に」として、これまでの研究成果をまとめるような形の発表を行った。 さらに、これまでの研究の過程で、『ジュニャーネーシュヴァリー』におけるバクティとナータのタントラとの関わりの重要性が明らかとなったので、この両者の関連に関する今後の見通しをつけるために、金沢大学において行われた、第14回日本南アジア学会において、坂田貞二・島岩の企画・司会で、「バクティからシャクティへ」というテーマのシンポジュウムを開催し、中世インドにおけるバクティとタントラのかかわりに関する討議を行った。その内容は以下の通りである。1.永ノ尾信悟(東京大学)「バクティの安売りから意識すらしない行為へ-シャークタ派ウパプラーナを中心に」、2.高島淳(東京外国語大学)「アーガマ的シヴァ教におけるバクティ」、3.山下博司(東北大学)「南インド・タミル語圏におけるバクティとタントリズム」、4.小磯千尋(東海大学)「マハーラーシュトラにおけるナータ派とバクティのかかわり」、5.榊 和良(北海道大学)「スーフィー道とナータ派-『アムリタ・クンダ』の伝播をめぐって」、6.頓宮 勝(奈良教育大学)「ベンガルのヴィシュヌ派とバクティ」。このシンポジュウムにおいて、バクティとタントラの関連に関する広い見通しを得ることができ、今後の『ジュニャーネーシュヴァリー』研究の方向性を見出すことができた。
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