研究の目的;本研究の第一の目的は、中国往生伝類すべてを網羅し、「往生人総覧」を資料的に提供することにある。それは、後学者に計り知れない裨益をもたらす。第二に、往生伝類を比較対照することによって、時代とともに誇張され、あるいは無視された往生人の変遷、いわゆる実像と虚像を明らかにする。それによって、時代社会を背景とした生き生きとした往生人像を浮き彫りにするだけでなく、時代社会の特徴が提示される。 研究実績の概要;第一の目的の「往生人総覧」は資料的にはほぼ成し終え、現在は厖大な往生人カードをいかに整理し、成稿化するか作業中である。その成果の一端として「中国往生人索引」(草稿)を「科学研究費研究成果報告書」(冊子体)に提出する。また、それによって知られた第二の目的、思想研究の成果もすでに学会で一部発表した(下記)。概要は以下のとおりである。 I.資料研究;1.往生伝類資料の調査・収集・整理、2.「往生人索引」(草稿作成)「往生人総覧」(作業継続中)、3.関係資料(浄土資料・高僧伝・他宗資料など)の調査・考証 II.思想研究;1.往生人の整理・分類・思想形態、2.往生伝類の諸問題(「中国往生伝類の諸問題」第15回北海道印度哲学仏教学会、1999年7月)、3.往生人の原型と変遷(「日中浄土教比較考」『印度哲学仏教学』第14号、1999年10月、「蓮社列祖としての延寿と宗頤」『印仏研』第48巻第1号、1999年12月)
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