1.口頭発表・印刷物等(1)ショーペンハウアー、ニーチェ、ハイデガーの三人を近代ドイツのニヒリズムの系譜として連関付けながら把握する研究は、論文「西洋(近・現代)価値ニヒリズムの系譜」(関根清三編『死生観と生命倫理』東京大学出版会、1999)としてまとめられた。(2)学会での口頭発表ではこの間四回行なったが、なかでも2000年3月の第九回国際カント学会(ベルリン、フンボルト大学)での「Kant und das Problem des Wert-Nihilismus」は有意義だった。これは現在編集中の 『学会論集』(Walter de Gruyter、2001秋出版予定)に収録される。また2000年10月の第51回日本倫理学会の大会(東京大学)において共通課題の提題者の一人として「カントとドイツ観念論の遺産と課題」と題して、カントとドイツ観念論を価値ニヒリズムの観点から論じた。(3)この間にシェイクスビアを価値ニヒリズムの観点から論じた『シェイクスビアの人間哲学』を上梓できたことが大きかった(花伝社、1999)。また竹内整一他編『ニヒリズムからの出発』(ナカニシヤ出版、2001)に「現代自然科学と<宇宙論的ニヒリズム>」を寄稿したが、これは好意的な反響を得た。 2.国内・海外との研究交流この間にウィーン大学哲学科のG.ベルトナー教授、H.フェッター教授とつごう四回交換講演を行なった(ウィーン、東京、埼玉)。これをもとに今秋晃洋書房から本を出版する予定である。 3.今後の研究の展開(1)価値ニヒリズムの系譜としてショーペンハウアー、ニーチェ、ハイデガーを内在的に連関付ける研究は、上記の1.(1)を出発点として今後、他の思想家(たとえば、キェルケゴール、フロイト)における価値ニヒリズムの研究も加味しつつ、さらに充実させた上で、近い将来に上梓したい。(2)本研究からの継承研究として「ドイツ観念論と価値ニヒリズムの問題」という研究課題を立案し、現在科研費を申請中である。
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