景観形成の基礎的要件をピックアップするため、本年度の調査地--(中都市を中心とする)盛岡市、金沢市、花巻市、東野市、堺市、徳島市、下関市、大分市、別府市、鹿児島市及び東広島市。海外では、ポーランドのグダニスク、ワルシャワ、クラクフ。 盛岡市、金沢市、大分市、鹿児島市、徳島市は県庁所在地であり、いずれも周辺地域に対して求心的役割を果たしており、定住人口以上の都市的機能を有していた。とくに金沢市と鹿児島市は、観光旅行客を多くかかえ、そための設備、都市景観作りに努力していた。漆芸、陶芸、金箔等の伝統的地場産業を育てていた。 堺市は政令指定都市規模の都市でありながら、隣接する大阪市に引きずられ、都市的整備はずいぶん遅れている。景観形成の観点からのポジティヴな主張は見出せなかった。 下関市は海港都市として明治以降も大きく栄えたが、現在はこの歴史を充分に生かし切れていない。東野市は民話の里としての性格を打ち出し、花巻市は宮沢賢治の郷里であり、温泉地であることを前面に押し出していた。 1) 中小都市では都市の理念、性格を明確にして成功している。人口が50万人以上になると、都市生活の整備に追われて、理念が見えなくなる傾向がある。これはワルシャワ、グダニスク、クラクフを視察しても言えることであった。 2) 都市景観には時間表現が必要である。歴史的伝統、季節、気象、1日の朝昼晩の変化。一つの時間の中に別の時間を予知させなければならない。一過性のイヴェントでは、客は2度訪れることがないであろう。 3) 都市景観には細部が必要である。細部は視覚だけでなく、そこに身をよせて触れることによってとらえるもの。 4) 私が委員長となり、東広島市酒蔵通活性化、西条駅中心市街地活性化のための答申を建議し、東広島市景観作成基本計画をまとめた。 5) 次年度はこれらの調査結果を整理して、指標にまとめる予定である。
|