間主観性の美学が、景観、特に都市景観の種々相を視界に入れながら、追求されるべきである。この調査研究によって、私たちは近代美学のパラダイム・シフトを促すことができる。私たちはこのシフトを、「私の」美学から「私たちの」美学へ図式的に要約することができる。また無関心の美学から関心性の美学へと言い直すこともできる。 研究は3部門から成り立つ。 1)原理論的研究。空間構成の問題、身体の有する内発的なキネーシス感覚をもとにした空間把握の現象学的研究。造形の論理としてのフォルムの問題。「よい景観」という価値の構造を研究する。 2)ミュトロジカル研究。原理と応用を媒介するミュトロジカルな世界の解明。本研究では、空間のミュトロジーとして、水が景観形成の中でどのようなミュートスを形成してきたが、時間のミュートスとして、歩くという活動がいかなるミュートスをつむぎだしてきたか、を考察する。従来の景観論、風景論はこの分野が未開拓である。金田は今後この分野を開拓を軸に景観形成を考えてゆきたいと考えている。 3)臨床学的研究 金田は、臨床学のロケーションを広島市の中心地紙屋町地区と東広島市酒蔵通りに限定。ポーランドの諸都市や日本国内の諸都市への視察を参考にした。きわめて具体的な問題解決が求められており、金田は指導的な発言をしてきた。特に、紙屋町は2001年にオープンする。また東広島市西条駅前は、駅と大学通りとの間の整備がすすんで、同年に両者がはじめてつながる。この方面についての基本的考え方を提出した。
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