今年度は、とにかく中学校、女学校、師範学校で使用された教科書の収集に全力を挙げる予定であったが、調査した各大学図書館では全く所有していないが、未整理のまま放置されていることが多い中で、例えば京都教育大学などでは、未整理ながらかなりの量を所有していることを発見、未だその整理が未完なのでどの程度まで系統的に収集できたか確認できていないものの、明治時代から第二次世界大戦前よでの中等學校レヴェルの各種教科書の収集に成功した。 一方、同じ収集の目的で郷里の弘前大学を訪問した際、前弘前大学教授笹森建英氏等と会う機会を得、同時に笹森氏の仲介で安田 寛教授(『唱歌と十字架』の著者)の資料も見せていただく機会を得ると共に、当研究が目指す実態の開明には戦前から戦災に会わずに存続している高等学校、女学校等の資料に直接当たる必要があることが確認され、現在在住している前橋で、前橋女子高等学校の図書館で資料を収集を開始しているが、こうした作業はやがて高崎女子高等学校等にその調査の範囲を広げ、更には群馬県内だけでなく、弘前でも主としてミッション系の女子高校での調査を開始する予定である。 こうした資料収集はそれを分析する方法及び視点が必要不可欠であることは言うまでもないことなので、研究会等では、明治時代以降の音楽を含めた教育全般がいかに国民国家形成という大目的のために結集されていったか、そしてその中央対地方の地理的体制の確立の過程の中での「故郷」の形成とその実体化が、音楽以外の分野で身体的、感情的レヴェルでいかに行われていったかを先攻研究書を参考に認識する努力が払われている。
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