研究課題/領域番号 |
10610055
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
佐々木 英也 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (50000394)
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研究分担者 |
小野寺 玲子 東京芸術大学, 大学美術館, 助手 (50302930)
薩摩 雅登 東京芸術大学, 大学美術館, 助教授 (80272657)
越 宏一 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60099934)
熊沢 弘 東京芸術大学, 美術学部, 助手 (20313314)
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キーワード | 聖ペテロ伝 / 聖堂壁画 / 中世イタリア / 旧サン・ピエトロ大聖堂 / 翼廊 / ヨハネス7世礼拝堂 / ミュステール / サン・ピエロ・ア・グラード聖堂 |
研究概要 |
ヴィティカノの旧サン・ピエトロ大聖堂翼廊を飾っていた聖ペテロ伝のモザイクは、西洋美術のペテロ図像のサイクルの中で最古かつ最重要な作例である。近世の新聖堂建設のために破壊され失われた,このペテロ伝サイクルが後続の中世ペテロ伝サイクルに影響を及ぼしたことは疑いない。これらはプロトタイプとして旧サン・ピエトロ大聖堂翼廊サイクルを復元するために大きな役割を果たす。 本年度においては、それらの諸作例の作品研究を行った。先ず、旧サン・ピエトロ大聖堂翼廊のペテロ伝サイクルの影響としてもっとも早い作例と考えられる、同じ聖堂内の教皇ヨハネス7世礼拝堂のモザイク(8世紀)を近世の模写素描によって各ペテロ伝場面の図像を分析し、次に、このサイクルと、アルプス地方ミュステールのザンクト・ヨーハン修道院聖堂北アプシスの壁画サイクル(9世紀及び12世紀)との比較を行い、両者の共通点を検討した。 続いて、トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂交差部アーチ南壁上部の壁画(11世紀)およびシチリア島モンレアーレ大聖堂南アプシス部(ペテロ礼拝堂)のモザイク並びにパレルモのカペラ・パラティーナ(両者とも12世紀)のモザイク・サイクルと取り上げ、それらもローマのペテロ伝図像の影響下にあることを具体的に指摘した。 旧サン・ピエトロ大聖堂には、翼廊及びヨハネス7世礼拝堂以外に、もう一つのペテロ伝サイクルが存在した。アトリウムの壁画(13世紀)である。近世の模写素描によって知られるこのポルティコのサイクルは、ナルテックスの全面外側及び内側に配されていたとみられ、おそらく古いペテロ伝サイクルと接点をもつと推定される。ポルティコのペテロ伝サイクルは、アッシージのサン・フランチェスコ上堂南翼廊壁画(13世紀)に影響を与え、さらに1300年頃、ピサ近隣のサン・ピエロ・ア・グラード聖堂身廊壁画において大々的にコピーされた。この最後の作例が、現在ペテロ伝サイクルの中で最大規模のものである。
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