研究目的として「イメージの生態学」を掲げ、具体的な研究対象としては善光寺如来縁起絵群を取り上げる計画であるが、従来、この分野は美術史的には全く未開拓なため、基礎から積み上げる作業となり、若干計画に遅れを見せているものの、全体としては着実な成果をあげるつつある。 ◎研究の具体的な達成目標と実績 物語図像の「生態学的」分析のために、基本的な資料収集(A)、作品のモティーフ・インデックスと話形インデックス作成(B)、そのための資料収集(C)を第一目標とした。(A)については、もっとも中核をなす長野、甲府、飯田の関連主要寺院の協力を得て、20点弱の作品の調査と資料写真撮影を終了した。今後、さらに作品の所在確認もふくめて、作業を継続する。(B)については、基本作業にもとづくメモの整理、調整の途中段階である。主たるテキストから話形インデックスは、比較的つくりやすいものの、モティーフ・インデックスは、図像索引のいまだ萌芽期にある我が国では、先蹤となるものがなく、大きな課題となっている。(C)の関連資料収集は、予算的制約もあり、寺社縁起および聖徳太子絵伝関係に重点を置かざるをえなかったが、基本書を収集しつつある。 今後は上記の作業を継続しながら、イメージ・データ・ベース作成を具体化して行く。今年度の作業で収集した資料は基盤になる。またこのフィールド・ワークのなかで得られた関連分野の研究者および寺院関係者との連携がさらに必要にもなろう。
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