研究目的として「イメージの生態学」を掲げ、具体的な研究対象としては善光寺如来縁起絵群を取り上げた2年間計画であった。従来、美術史的には全く未開拓な分野だったため、文学等の先行関連研究を参考にしながらも基礎から積み上げる作業となった。 はじめの10年度は、物語図像の「生態学的」分析のために、基本的な資料収集(A)、作品のモティーフ・インデックスと話形インデックス作成(B)、そのための資料収集(C)の3点を日標とした。(A)については、もっとも中核をなす長野、甲府、飯田の関連主要寺院の協力を得て、20点弱の作品の調査と資料写真撮影を終了した。(B)について基本作業にもとづくメモの整理、調整。(C)の関連資料収集は、予算的制約もあり、寺社縁起および聖徳太子絵伝関係に重点を置くことになった。 次の11年度は、同じく(A)(B)(C)の作業を継続し、とくに(B)に重点を置いた。主たるテキストからの話形インデックスとモティーフ・インデックスを関連づけながら、イメージ・データ・ベース作成を試作してみた。図像索引のいまだ萌芽期にある我が国では先例ともなるものなので工失に時間を要した。今後まだ改良の余地があろう。 結果として、今後、未調査の善光寺如来縁起絵をさらに加えて考察すること。また、関連絵画作品とのイメージ・マップの共有度など、歴史的にも同時代的にも視野を広げてゆくという課題が残されている。
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