研究概要 |
本研究の目的は、トプカプ宮殿美術館が所蔵する4冊の画帳(通称サライ・アルバム)に貼られた約1000点の絵画の中から、中国絵画や中国文化の影響が著しい作品を選び、イスラーム世界における中国美術や中国文化の摂取の諸相と、それらがイスラーム化する過程を考察することであった。この課題研究の主なものは、玉座像の比較研究と中国太湖石の文様化の考察で、平成13年3月19-20日にトプカプ宮殿美術館で行われた国際シンポジウムで高く評価された。 一方、画帳は絵画や書跡の断片を張り合わせたイスラーム世界に特有の書物形態で、画帳の総合的基礎研究も必須であった。そのためトプカプ宮殿美術館図書館で3回の研究調査を行い、画像と資料のデータベース化の作業を行った。H.2153の総フォリオ数は199葉であるが、終年度までにフォリオ115までの画像とデータを入力・整理した。本作業も上記シンポジウムで報告され、高い評価を得た。入力が未完に終わったのは、平成11年8月17日のイスタンブル近郊で生じた大地震によって作業場の図書館壁面に亀裂が生じ、図書館が来る6月まで閉鎖され、予定していた2回の研究調査が行えなかったことによる。 しかし本研究はトプカプ宮殿美術館によっても奨励され、最終的にはH.2153,2160のカタログと研究書の出版をめざし、本研究はその基礎資料として位置付けられているので、本研究調査の継続がトプカプ宮殿美術館側からも強く望まれている。
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