研究概要 |
精神分裂病には妄想・幻覚・自閉などの症状がある。本研究は,妄想と幻覚のアセスメント技法を新たに開発し,それを用いて症状の成立機序について検討し,いくつか興味深い知見を得た。 1. 妄想の内容的側面について,質問紙によるアセスメント技法である妄想観念チェックリストを新たに開発した。これを用いて,健常者の妄想的観念について調べ,多変量解析を用いて構造化を試みた。その結果,正感情と負感情,自己と他者の方向性という2つの次元で構造化できることを明らかにした。また,ライフイベントによって妄想的観念が高まることを,健常者の縦断調査から明らかにした。 2. 妄想の形式的側面について,半構造化面接によるアセスメント技法である対人観念多次元面接法を新たに開発し,本年度は,その信頼性と妥当性を検討するため,健常者を対象とした調査をおこなった。その結果,信頼性については十分高いことを確かめた。精神分裂病を対象とする臨床研究は来年度におこなう予定である。 3. 幻覚の体験頻度について,質問紙によるアセスメント技法である幻聴様体験尺度を新たに開発した。本年度は,健常者を対象とした調査をおこなった。その結果,健常者の幻聴様体験の頻度は想像されるより高いことを明らかにした。また,ライフイベントによって幻聴様体験が高まることを,健常者の縦断調査から明らかにした。 4. 幻覚の形式的側面について,半構造化面接によるアセスメント技法である幻聴構造化面接法を新たに開発した。精神分裂病の患者を対象として実施し,多変量解析を用いて構造化を試みた。その結果,自我障害の有無,体験への感情の正負という2つの次元で構造化できることを明らかにした。
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