視覚障害者の画像認識の特徴を探るため、ドット(直径1mm程度の突起)を要素とするテクスチャーパターンを用意し、刺激要素の密度をさまざまに変化させ、密度が急激に変化する境界を触覚が検出できるかどうかを調べた。その結果、触覚においては、密度変化をほとんど検出できないことが判明した。これは視覚とは根本的に異なる性質である。おそらく視覚においては並列に画像を処理できるのに対し、触覚においては、つねに探索している部分を継時的にまとめ上げることが必要であり、この点が触覚によるテクスチャー分離を困難にしていると思われる。 次に、線図形を用いて、目隠しした被験者に描かれている図形を再生させる実験を3つ行った。用いた図形は2つの円が部分的に重なり合っている図形(Metzgerによる古典的な図形)等、線と線が交差しているものである。その結果、視覚においては「良い連続」が支配的であるのにたいし、触覚では「よい連続」がほとんど働かないことが、両者の分節化を非常に異なるものにしていた。例えば、2つの円の場合、視覚においてこれを2つの円と知覚させているのは、線が交わっている部分において「良い連続」が自動的に作用しているからである。触覚においてはこれが有効ではないため、3つの部分に分節したり、外側の大きな楕円と内側の小さな楕円という分節が起こりがちになる。触覚において優勢な分節化の法則のひとつは、おそらく「閉じた図形をひとつの分節」として知覚するというものであろうと思われる。
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