研究概要 |
昨年度は,能動触による山曲面と谷曲面の知覚を調べた。実験で用いた標準図形と比較図形には山曲面を持つ図形と谷曲面を持つ図形の2種類がある。刺激図形として用いた山と谷の曲面は、1波長のsin曲線であった。標準図形の曲面の幅は実験1、2、4では5.1cm、実験3では3.4cm;高さ(深さ)は1.0cmの1種類。比較図形の曲面の幅は3.4cmの1種類;高さ(深さ)は0.1cmから1.5cmまで0.1cm刻みで15種類。極限法により主観的等価値(PSE)を測定した。この結果、以下の4点が影響を及ぼしていることが分かった。この4点は、図形の位置に関係なく影響を及ぼしていた。1.幅5.1cmと幅3.4cmでは幅3.4cmを高く(深く)知覚し、幅5.1cmを低く(浅く)知覚する。(このことは先行研究により確認されている。) 2.標準図形の向きを下向きにした時に高く(深く)知覚し、標準図形の向きを左向きにした時、低く(浅く)知覚する。3.幅3.4cmの山曲面と谷曲面では山曲面を高く(深く)知覚し、谷曲面を低く(浅く)知覚する。4.比べる曲面、比べる曲面の幅が異なる時、高く(深く)知覚する。(山曲面と谷曲面、幅3.4cmと幅5.1cmを比べた時、高く(深く)知覚する。) 本年度は昨年度の研究に基づき、曲面を触るときの指先の圧力、面積が上で述べた錯覚とどんな関係にあるかを調べようとした。用いた装置は、新田製I-scanシステムで、これは薄いフィルムでできており、これを曲面に貼り付けることによって、表面に加えられる圧力や面積を解析できる。これを用いてデータを分析してみたが、現時点では、曲面に触れるさいの圧力、面積の時系列と、錯覚量のあいだには何らシステマティックな関係をみいだすことができなかった。ただ本質的に無関係なのか、あるいは解析のしかたが不充分であるのかは必ずしも明らかではない。I-scanシステムにはノイズが必然的に多く含まれており、ノイズの除去のしかたに多くの問題をかかえていた。この処理方法を改善することによって、何からの関係をみいだすことはありうるかもしれない。この点を今後の課題としたい。
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