研究概要 |
本研究では,当初考えていた指尖容積脈波波高値よりも,ストレスに対していっそう鋭敏かつ理論的意味合いの明瞭な,規準化脈波容積(normalized pulse volume;NPV)を,血管交感神経浩動の指標として用いることに変更した(澤田,1999).NPVとは,゙ΔV_b/V_b=(ΔI/I)/ln(I_c/I)"で評価される,無次元の量である.ただし,式中の左辺にあるΔV_bは,被験指尖部位における全血液量V_bの脈動成分を表す.また,右辺にあるI,ΔI,I_tは,指尖部位における透過光量I(dc成分),その脈動成分(ac成分),および,虚血状態での透過光量(dc成分),をそれぞれ表す.なお,光電式指尖容積脈波計は.近赤外光(940nm)を被験指尖部位で透過する方式のものを,独自に試作した.また,指尖部位で虚血状態を得るため,専用の指カフも合わせて試作した. 本年度は,第1に,光の透過に関する基本的原理とされるLambert-Beerの法則が,in vivoの生体に適用できるか否かを,理論的妥当性の問題として検討した(澤田他,1998;澤田,1999).次いて,第2に,NPVが,指尖部位における血管緊張度(vascular tone)の指標と見なせるか否かを,10名の男女を被験者とし,恒温水槽にて各種の水温を作成しながら(44℃→22℃→11℃),実験的に検討した.その結果,水温の下降に従って,NPVは減少し,指皮膚血管抵抗は上昇するのが認められた.また,両者の間には,きわめて高い負の相関が見出された.さらに,反応性充血の手法によって,あらかじめNPVの最大値を推定しておき(NPV_<max>),゙NPVabj=(NPV_<adx>-NPV)/NPV_<max>^*100"でNPV_<adj>に換算してやったところ,結果はさらに良くなるーーつまり,被験者間バラツキの減ることが判明した.
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