本研究は、ステレオ図形で図形的及び奥行き関係の曖昧性を操作することにより、形態・奥行きの反転知覚現象を実験的に解析し、3次元形態の知覚における動的文脈依存性と曖昧性解決過程を明らかにすることを目的とする。奥行き知覚の単眼手がかりについては不可能図形パターンにより、両眼視差についてはJuleszの近接性に基づくアルゴリズムにより、曖昧性を導入し反転知覚現象を生起させ、曖昧性を含む実体刺激が与えられた時に、どの様な知覚的解決が行われるか検討した。本年度は、実体図形による奥行き知覚実験を行った。単眼手がかりについてはネッカーキューブ図形パターンにより、両眼視差についてはJuleszの近接性に基づくアルゴリズムにより、曖昧性を導入し反転知覚現象を生起させた。曖昧性を含む実体刺激が与えられた時の知覚的解決について以下の項目を検討した。 1 刺激パターンが構成する面の形の、幾何学的性質及び熟知性・単純性・有意味性と反転現象の関係を検討することにより、幾何学的推論と知覚的解決過程の関係を解析した。 2 曖昧性の統合が、曖昧でない刺激要素の質的性質・量的性質によって生じる知覚的反転の偏り・傾向を測定することにより、知覚的文脈の形成過程を検討した。 実験では、弁別あるいは運動反応をともなわない観察条件でfMRIにより脳の活動部位を測定することにより、知覚解決過程を解析し、側頭後頭葉のLOの活動と密接に関係づけられる事を明らかにした。
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