研究概要 |
本研究は、形態図形刺激の図形的及び奥行き関係の曖昧性を操作することにより、形態・奥行きの反転知覚現象を実験的に解析し、3次元形態の知覚における動的文脈依存性と曖昧性解決過程を明らかにすることを目的とする。平成10〜11年度は、実体図形による奥行き知覚実験を行った。ネッカーキューブ図形パターンをもちいて曖昧性を含む実体刺激が与えられた時の知覚的解決について以下の項目を検討した。実験は、受動的観察条件でfMRIにより脳の活動部位を測定することにより、知覚解決過程を解析した。ネッカー・キューブ刺激の構成要素である線の布置を変化させた時の知覚的変化と脳の活動部位の関係をFMRIによる脳イメージングによって解析した。その結果、知覚的統合および曖昧性の知覚的解決においては、後頭葉のL0と頭頂葉IPSの協調的な活動の重要性を明らかにした。文脈依存性については、運動および色の対比現象をとりあげ、対比による主観的知覚の変化(文脈効果)と物理的な刺激刺激属性の処理過程について脳の活動部位の関係をFMRIによる脳イメージングによって解析した。運動対比現象に関与する脳活動部位の解析の結果、側頭葉のMT後頭葉のV3Aの機能的な違いが明らかとなった。また、色対比については、後頭葉視覚領V1,V2が色の物理的な刺激特性への依存性をもつのに対して、腹側の領野V4、V8は主観的な色の知覚に対応して活動することを明らかにした。 以上の結果を基に、平成12年度は、大脳皮質後頭葉、腹側側頭葉でレチノトピーを持つ領野の解析を行い、解剖学的構造と機能的構造の関係、および、個人差について検討した。
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