今年度は、早期開眼者YKについてその視・運動系活動の形成過程を探索することに加え、視野変換事態、視野遮蔽事態、視野制限事態の3事態における移動行動の形成過程を探索し、移動行動の成立機序を総合的に検討した。 (1)開眼児YKは、生後23日目に両眼の先天性白内障の手術を受け、現在08歳になる少女である。聴覚障害(推定聴力損失80-90dB)、心臓疾患(心房中隔欠損等)を伴う。われわれは05年前にYKと出会い、YKが小学校に入学してからその定位・移動行動の形成過程を中心に探索してきた。今回は、通学路を繰り返し歩くときの変容過程に焦点を当てた。その結果、(a)路上に置かれている事物を捉える際、当初は視・運動系と触・運動系の活動が役割を分担しているが、徐々に視・運動系の活動のみとなる。(b)通路の前で立ち止まる行動が徐々に消えていく。(c)後ろを振り向く行動が現れてくる。 (2)視野変換、視野遮蔽、視野制限の3事態における移動行動は、外界をつなげる基準点を選び出していく過程として捉えることができる。基準点と基準点をつなげる方略も同時に変化していくことが明らかになった。
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