洞察は人間の認知の中で最も動的で、創造的なものの一つである。本計画は心理学と計算機科学の知見を用いて、このメカニズムを計算レベルで特定し、心理学的に妥当な洞察の理論を提案することを目的としている。 本計画において提案される理論では、洞察前における固着は、対象レベル、関係レベル、ゴールの3つの制約によって発生すると仮定されている。そして、失敗を繰り返すたびに、これらの制約が比較的独立に緩和されていき、その結果確率的に洞察がもたらされると仮定している。 洞察の計算モデルについては、開(共同研究者)が後づけ的なルールの導入を用いずに、洞察の創発性をモデル化するための基本的なアルゴリズムを検討した。各制約は重みつきのオペレータ選択ルールとして定義される。そして緩和については、基本的には近年人工知能研究においてよく用いられている強化学習と多重制約充足アルゴリズムを組み合わせた形のアルゴリズムが提案された。 心理学実験においては、各々制約の実在性を前年のように観察データからではなく、実験的なコントロールを加えることにより明らかにした。対象レベルや関係レベルの制約については、それが機能しなくなるヒントを与え、それによってパフォーマンスがどの程度向上するかが検討された。その結果、各々のヒントはきわめて劇的なパフォーマンスの向上を促すことが明らかになり、制約の存在を一層明確な形で実証することが出来た。
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