異年齢顔の同一性判断の信頼性・安定性を検討するために、異なる被験者による同一刺激画像に対する評定値の一致度を相関係数によって測った。その結果、.5から.8の相関係数が得られ、異年齢同一顔に対する同一性評定は被験者間で比較的安定したものであるといえる。これまで行ってきた評定実験すべてにおいて、同一人物異年齢顔ペアに対する評定値と別人物顔ペアに対する評定値には有意差が示されてきた。このことから、異年齢顔間でも同一性判断が可能であると結論づけることができる。 成人期顔が既知なものである場合、異年齢顔同一性判断成績が良いことが示されているが、その原因を探るために複数のポーズの未知顔を提示することの影響を調べた。同一性判断に先行して、複数のポーズで未知顔を提示した場合、ひとつのポーズの提示に比べて、同一性判断成績が向上する傾向が見られた。 実験に用いた刺激顔は必ずしも正面顔ではないため、物理的属性の測定は困難である。顔の構造的な変化を伴う異年齢顔間での同一性判断が、顔のどのような情報に基づいてなされているかを検討するために、同一性判断が容易な顔ペアについて被験者に言語報告を求め、分析した。その結果、目の大きさや形状といった目領域の報告が最も多かった。しかしこれまでの顔認知における手がかりの重要性の研究結果と異なり、鼻の形状や鼻の高さなど鼻領域の報告も比較的多くなされていた。また、成人期顔が既知なものである場合には、顔の全体的な印象に基づいて判断したという報告がなされていた。
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