研究概要 |
1.筆者の研究グループは,近年,音読課題を用いた意味的プライミング効果に関する実験的研究を行ってきた.この研究では,文中の多義動詞を理解する際に,統語的情報と意味的情報がどのように相互作用するかを明らかにするため,クロスモダル・プライミング法を用いている.従来用いられてきたボイスキーは,信頼性がないことが最近の研究によって明らかになったため,被験者の音読反応をDATに録音し,デジタル化した音声スペクトルグラムに基づく視察によって分析を行った.この成果は,1999年度の日本心理学会大会の個人発表,同大会のワークショップ(「単語認知研究における音韻,形態,意味情報をめぐる諸問題」:企画者は筆者),国際認知科学会大会にて発表した. 2.理論的研究として,筆者のグループでは,上記の実験に対応した並列分散処理モデル(コネクショニスト・モデル)によるコンピュータ・シミュレーションを行ってきた.筆者のグループが作成した,相互結合型ネットワークに基づく並列分散処理モデルは汎用性が高く,過去の様々な実験データを包括的に説明し,新たな実験の結果を予測できる.本モデルに関しては,1999年度の国際認知科学会大会にて発表し,本モデルに関する論文が,2000年に刊行される専門書の1章として収録される予定である.また,1999年度に,本モデルの意義を含めて,単語音読に関するモデルの展望論文を紀要に発表した. 3.筆者の共同研究者のグループ(カリフォルニア大学ほか)によって,リアルタイムで音読潜時を測定し,精密な音素分析を行う,PC用のプログラム(Runword)が英語環境で開発されている.本年度は,このプログラムの32bit版を日本語環境に移植・拡張する作業を行い,日本語文字フォントを表示できる日本語版プログラムが完成した.
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