1. 研究の目的:行動遺伝学的にDBAとC57BLの2系統の近交系マウスのアルコール嗜好性とストレス感受性は反比例する。ストレスがアルコール摂取を強めるなら、ストレス感受性は高いが本来あまりアルコールを摂取しないDBAのほうが、ストレス感受性が低く多く摂取するC57BLよりも、ストレス状況ではアルコール摂取行動が増強されやすいことになる。このような仮説を検証する。 2. 研究の実施:既存の2台のマウス用Running-wheel回避学習装置を改造し給餌給水装置を取り付け、新たに同装置を2台作成し、合計4台の装置を用いて以下の長期セッションを行っている。(1)ストレスを与えずに実験装置内に2日問おいてアルコール(10%)と水の選択を行わせ、それぞれの系統のアルコール嗜好性を調べる。(2) Iso&Shimai(1991)の方法を用いてPassive回避学習を行い、それを心理的なストレスとして5日間の長期連続ストレスセッションを行なう。24時間を最短10分、最長150分の24の期間に分け、そのうち12回はストレス(S)期、のこる12回は休息(R)期とし、SとR期を交互に与える。このようなセッション中の水-アルコールの選択を記録する。(3)最後に(1)と同じ方法でアルコール嗜好性を求め、ストレス負荷前からの変化を調べる。 3. 結果:1999年2月現在も実験を実施中であるが、今までに得たデータによれば、(1)最初のストレスを与えない選択期間にはC57BLがDBAマウスよりも多くアルコールを摂取する。(2)ストレスセッション中のアルコール摂取は、どちらの系統のマウスも抑制されるが、その程度はC57BLマウスの方が大きい。(3)ストレスセッション終了後に調べたアルコール嗜好性はセッション前から変化しない。今後もさらに実験を続けて、まとめた結果をできるだけ早く学会に報告したい。
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