研究概要 |
行動遺伝学的にC57BLとDBAの2系統の近交系マウスのアルコール嗜好性とストレス感受性は反比例する。ヒトで言われているようにストレスがアルコール摂取を強めるならば、DBAマウスの方が、C57BLマウスよりもストレス状況ではアルコール摂取が強められることになる。 磯(Iso&Shimai,1991)が開発したマウス用のrunning-wheel回避学習装置を改造し、給餌装置と水-アルコールの選択摂取装置を取り付け、弁別事態で受動的回避行動を維持させることを心理的ストレスとして、10日間連続する長期セッションを行い、そのアルコール摂取に及ぼす効果を調べた。 セッションでは、ストレス期と休止期が交互に置かれ、2つの時期は弁別刺激によって合図された。マウスは餌、水、アルコールをいつでも摂取でき、2つの時期のアルコール摂取行動が比較された。 セッションの進行に伴い、C57BLマウスはDBAマウスよりもアルコールを多く摂取するようになった。これは従来報告されている、両系統のマウスのアルコール嗜好性と一致する。そして、マウスのアルコール摂取をストレス期と休止期の2つの時期にわけて調べると、C57BLマウスは、以前報告したラットの結果(磯、1998)と同じように休止期にストレス期よりも多く、反対にDBAマウスはストレス期に休止期よりも多く摂取した。このような結果は、ストレス感受性の高いDBAマウスでは、視床下部-下垂体-副腎皮質系がより強く賦活されるために、それを緩和するようアルコール摂取を強める可能性が示唆された。
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