本研究は、日本人、日本人帰国子女、日系米国人、白系米国人という4群において、独立的自己を表す内的資源スキルと関係的自己を表す人間関係スキルよりなる自己有能感の様態を仕較し、青年期の自己の発達が個人が属する文化経験によって異なることを実証することを目的としている。 1.自己有能感の現実評定と重要さ評定 : (1)自己有能感の現実評定が日本人・帰国子女中学生の学業及び友人関係領域で顕著に低いこと、(2)日本人・帰国子女・日系米国人の自己有能感重要さ評定が相対的に高い傾向に特に中学生で共通性が見られること、(3)従って、自己有能感の現実評定と重要さ評定のずれは、日本人と帰国子女において大きく、中学生が現実の自己有態感に不全感を抱いていることが明らかになった。 2.自己有能感の年齢的変化 : (1)中学生よりも大学生において、より多くの領域で女性の現実評定が男性を上回る傾向があること、(2)重要さ評定は、大学生になって下がる傾向にあること、(3)しかし、両者のずれにおいては、日本人・帰国子女大学生では、友人関係領域において、中学生と同様に不全感を抱いていることが明らかになった。 3.自己有能感の領域間の関連に見られる群間差 : 日本人・帰国子女において、内的資源スキルと人間関係スキルが独立の因子構造をなしているのに対して、日系米国人・白系米国人においては、二つのスキルが共存した因子構造をなしており、日本人・帰国子女においては、個別性と関係性が分化しているのに対して、日系米国人・白系米国人においては、両者が統合される傾向にあることが示唆された。
|