本研究では、まんが読解力(まんがリテラシー)の規定因を明らかにすること、ならびにまんが読解力の個人差や発達差が生じるまんが読解の過程を眼球運動分析から明らかにすることを目的としている。さらに、まんが教材の効果やその効果に及ぼすまんが読解力の影響、まんが読み体験の文化的影響についても検討を行うことも目的としている。 本年度は、以下の諸点の検討を行った。 1.まんがをとりあげた心理学的研究の収集を引き続き行った。教材効果を取りあげた研究や符号や背景表現の理解を取り上げた研究などが見られた。また、まんがの心理学的な研究の展望的な論文も見られた。 2.まんが読解力の査定・分析を行い、まんが読解の基礎として文脈理解力とまんが表現技法の理解力という2つの因子を因子分析により抽出した。また、これら2つの因子がまんが読解力(まんがリテラシー)の規定因であることを重回帰分析より明らかにした。 3.まんが教材の学習効果を検討し、まんが読解力の高い者が低い者よりまんが教材による学習効果が高いことを見いだした。まんが読解力の認知的意義の一端を明らかにした。 4.まんがの教材効果を扱った諸研究の動向をまとめた。これら3、4については千葉大学教育実践研究にまとめ、論文として掲載した。 5.まんが読解の基礎過程としての眼球連動の解析を、まんが読解力の高い者低い者を対象に行い、高い者はより絵に注視するシステマチックな視線の動きがあり、低い者は吹き出しの文字に注視しランダムな視線の動きが特徴的であることなど幾つかの差異を見いだした。 6.まんが読解力の国際比較のための、まんが読解力テスト(CCCT-3)の韓国語を試作した。
|