昨年度は主にスポーツに関する自伝的記憶と感情および動機づけに関する調査を大学生と対象に実施した。その結果一部は昨秋の日本心理学会でポスター発表を行った。また、今年の夏にスエーデンのストックホルムで開かれる国際心理学会でも発表の予定である。スポーツの自伝的記憶の内容は競技での成功、失敗経験だけでなく、スポーツを通した正、負の人間関係の思い出、あるいは怪我の体験等が主なものであったが、その時の快・不快の感情が現在のスポーツの動機づけに反映していることが示された。本年度、新しく行った調査は2つあり、1つは昨年度と同様、スポーツの自伝的記憶に関するものである。しかし、今回は特に成人を対象として、日頃、市が主催するスポーツ教室等に参加している人と対照群として全く参加していない人に注目した。まだ、結果を整理していないので何とも言えないが、両群での自伝的記憶の内容はかなり異なるものと予想される。もう1つは領域をかえ、英語学習に関する自伝的記憶と感情、および動機づけとの関係を検討しようとする研究である。大学で英語をとっている学生300名ほどを対象にこれまでの英語学習に関する印象的に残っている記憶について記述させ、その内容と現在の英語学習への動機づけがどの程度予測しうるかをみようとしている。特に今回はこれまでの動機づけの測定がやや粗雑であったので、それを修正し、多面的に動機づけを据えようとした。すべての研究で使用されている研究法は基本的には同じものでこれを「半構造化された自伝的記憶記述法」をよび、その考え方については2000年3月出版の小嶋秀夫・速水敏彦・本城秀次編「人間発達と心理学」(金子書房)でもふれた。しかし、現在のところ研究結果を論文としてジャーナルに載せたものはない。
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