研究概要 |
本研究の目的は,生物学的要因の指標としてラテラリティを,また心理社会的な要因として動機づけと関連する男性性-女性性変数を取り上げ,空間能力に現れる両者の相互作用を検討することであった。先行研究で用いられてきた潜在的ラテラリティの測度を含む複数のラテラリティ指標を用い、Vandenbergの三次元心的回転課題の遂行成績との関連を検討すべく予備的調査研究を大学生を被験者として実施した。その結果,(1)先行研究と同様,心的回転に性差と専攻差がみられたこと,(2)潜在的ラテラリティの一部の指標と心的回転の間に関連がみられたが.男女でその方向性が異なっていたこと,及び(3)女子でのみ心的回転と男性性-女性性変数との間に関連がみられたことなどの知見が得られた(日本心理学会第62回大会(1998.10.8-104東京学芸大学)にて結果の一部を報告)。同時に,予備的調査研究で,以下のような問題点も明らかになった。すなわち,(1)予備的調査研究で用いた.Vandenbergの三次元心的回転課題の原版が,すでに複数回のコピーであって不鮮明であり,また,実施上の手続きに関しても不明瞭なところがあるなど,何らかの手直しが必要であること,(2)ラテラリティ指標に関しても,体系的な指標の選択無しには,潜在的ラテラリティの効果の評定が困難であること,の2点である。このような問題点を早急に改善して本調査を実施すべく,再度先行研究を精査すると共に,内外の複数の研究者に指標の照会を行い,Michael Peters氏(University of Guelph,Canada)より再標準化された三次元心的回転課題原版の提供を受けると共に,先行研究に基づくラテラリティ指標の再構成を行うことができた。それらの指標を用いて.現在,大学生を被験者とした本調査を一部実施し,結果の集計中である。今後,大学生被験者に対する本調査を続行すると共に,高校生を対象としたデータの収集を次年度上半期に実施する予定である。
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